5.大使室から
(2)大使挨拶
(ア)着任以来の2009年の取り組み
オマーンにおける我が国経済の存在感には大きなものがあります。昨2008年の我が国とオマーンとの貿易は、前年の約60億ドルを上回る100億ドル近くに達し、我が国はオマーンにとって実質上第一の貿易パートナーの地位を占めています。石油・ガス及び同製品が我が国の主要輸入品目ですが、それ以外に我が国はモンゴウイカやマグロ、インゲン豆などの農水産品も輸入しています。オマーンは、我が国から自動車や機械などを輸入していますが、オマーンが日本のメロンを世界で最も輸入している国であることは余り知られていません。
他方で、オマーンに進出する日本の企業は未だ11社に留まっており、オマーン政府からはより積極的な我が国企業の進出が望まれています。この様な観点から、昨年11月には、在ドバイのジェトロ事務所の協力を得て、初めての「日・オマーン・ビジネスフォーラム」を開催しました。そこで動き出した具体的商談も幾つかありますが、この様な企業の出会いを通じて、我が国が得意とする省エネ技術や太陽エネルギーといった環境技術など先端分野での協力が進展することを期待しています。
昨年から今年に掛けて、政治・安全保障分野での交流の深化には目を見張るものがあります。昨年夏には奥田総理特使(トヨタ特別顧問)が福田総理のイニシアチブでオマーンを訪問し、我が国と湾岸諸国との重層的な関係を構築するための方途について政府要人と話し合いました。また、インド洋で補給活動に従事する海上自衛隊艦船のオマーン寄港は既にこれまで30回を上回っていますが、本年は9年ぶりに練習艦隊も寄港し、新たに始まった海賊対処活動と相俟って、海上自衛隊とオマーン海軍との交流には深まりが見られます。両国間の政治交流でも、西村外務大臣政務官(2月)、福田総理特使(3月)のオマーン訪問がありましたが、7月のバドル外務省事務総長の訪日を機に、新たに戦略的視点に立った協議が始まるなど、政治・安全保障分野における両国の対話が広がっています。
オマーンにおける女性の社会進出は進んでおり、閣僚や国家評議会議員を始め社会の枢要な地位につく女性も多いのですが、他方で、部族社会の伝統を反映して、封建的な風習には依然根強いものがあるため、女性の地位を巡る啓蒙が必要とされています。当館では、これまでも「女性の知的交流」と銘打って、様々な企画を実施してきていますが、去る2月には遠山敦子・新国立劇場理事長(元文部科学大臣)が当国で唯一の国立大学であるスルタン・カブース大学を訪問し、女性にとっての教育の重要性について講演すると共に、女性の自立を支援するNGOを訪ねて関係者と活発な意見交換を行いました。
オマーン人の対日感情は極めて良好であり、日本に対する関心も高いと言えますが、日本に対する知識や理解が十分とは言えません。そこで、若い世代を視野に置いて、ポップカルチャーを通じて様々な日本の側面を紹介しようと、私の着任後間もなく、「大使館映画クラブ」を設立しました。同クラブにおいて、我が国同時代監督の映画作品を紹介してきており、10回に亘る上映を通じて当地でも一定の評価を得るようになっています。その他にもツーリズム・カレッジでの「ジャパン・ナイト」(2月)、カルチャークラブでの講演(3月)などを通じて、オマーンの学生や知識人に対して我が国とオマーンとの関係や我が国の外交政策についての広報を行う一方、オマーン社会の女性を対象に季節の良い時期を捉えて屋外で裏千家師範による野点や当地オマーン人教師と妻との共演による生け花デモンストレーションを行うなど、伝統文化の紹介にも努めてきています。
文化広報の分野では、昨年4月のハイサム遺産文化大臣の訪日を踏まえて、オマーン国立公文書館設立への協力、両国歴史に関わる文書の交換、考古学分野での支援など協力のためのレールが敷かれており、順調に協力が進んでいます。いずれ、目下建設が進行中の王立オペラ劇場に関する協力も視野に入ってくるものと思います。
オマーンには、国王の勅令で1974年に設立された「オマーン・日本友好協会」が存在します。近年、その活動がやや停滞化していましたので、今年はマングローブの植樹祭や山岳部へのジオパーク・ツアーなどの企画を大使館と同協会が共同で計画しています。これらに対する邦人企業の資金的支援及び邦人会員の積極的な参加も得つつ、友好協会と邦人社会との協力関係を再構築すべく努力したいと思います。
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