5.大使室から
(2)大使挨拶
(エ)2010年以降に向けての課題
この夏に起こった原油タンカー「M.Star号」事件はホルムズ海峡の安全航行についての重要性を再認識させました。厳しさを増すイラン情勢を視野に入れると,外海をインド洋に面し,ホルムズ海峡の外側に良港を有するオマーンの地政学的な重要性が高まっているのがお分かり頂けると思います。引き続き,オマーン政府との政策対話を深め,海軍を中心に海賊対処や航行安全確保の面での協力を深めて行くことにより,湾岸地域の資源に大きく依存する我が国の経済権益を確保すべく努めていく必要があります。そのために,政治,経済,文化を始め幅広い分野における交流を深めていくことも重要です。
世界経済が停滞する中で,原油価格の上昇も手伝って湾岸諸国の財政は潤っています。オマーンも例外ではなく,2011年から始まる第8次経済開発5カ年計画では活発な公共投資が見込まれ,社会インフラや産業基盤の拡充のための財政支出が引き続き経済を牽引するものと思われます。我が国はJICAの技術協力による「産業振興マスタープラン」,「電力省エネルギー・マスタープラン」作りに協力して,5カ年計画への協力を推進していきますが,そこでは日本企業にとってのチャンスも生まれてきます。将来的には,湾岸協力機構(GCC)の共通計画である高速鉄道網や原子力発電所の建設なども視野に入って来るでしょう。産業構造の多角化と若年層に対する雇用の確保はオマーン政府にとって重要課題ですが,引き続き,我が国として官民協力の下にオマーンの国造りに貢献できればと思います。とりわけ,我が国が優れた先端技術を持つ再生可能エネルギーや省エネ,海水淡水化や排水処理などの水事業の分野におけるオマーン側の期待には大きなものがあり,我が国の協力の余地も大きいものと思われます。
2012年は,我が国がオマーンと外交関係を樹立して40周年の記念すべき年に当たります。既に,幾つかの祝賀行事が俎上に上がっていますが,文化行事を中心にこれから玉込めを行って行こうと考えています。
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