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5.大使室から

(2)大使挨拶

 (オ)離任に当たっての森元大使挨拶(2011年8月15日)

 在オマーン日本国大使としての勤務も3年を過ぎ,この度,ここでの任務を終えて帰国することになりました。振り返って見れば,私にとって当地での仕事は大変に充実したものであり,当地での歳月はあっという間に過ぎ去った感じがしています。

 オマーンでの経験は,いずれも思い出深いものですが,とりわけ,カブース国王の即位40周年記念に当たる年を体験できたことは,外交官として大きな喜びでした。この機会に,カブース国王による40年の統治がこの国にもたらした発展と安定の軌跡を振り返ることが出来ました。二国間関係で見れば,カブース国王の寛大な支援により東京大学に中東研究のための「カブース国王講座」が設立され,また,長年の伝統を誇るオマーン・日本友好協会が改組されてハイサム殿下(遺産文化大臣)を名誉会長に戴く立派な組織に生まれ変わりました。

 オマーン市民と40周年を共に祝うべく日本大使館が成功裡に行った数々の行事も思い出深いものです。パリで活躍した森英恵さんのオートクチュール・ファッションショーや「菊の会」による日本の伝統舞踊はマスカットの人々の共感と称賛を呼び起こしました。優れた日本の食材を紹介するイベント,ヒューマノイド・ロボットについての講演やオマーン人学生も参加したロボット・コンテスト,アニメーションのワークショップなど若者の心を捉えた行事もありました。  

 日本とオマーンの経済関係も更なる発展に向けて新たな局面を迎えています。両国の貿易は,リーマンショックに伴う世界経済危機の影響を受け一時期停滞しましたが,その後順調な回復の軌道を歩んでいます。日本の大手企業が組んだコンソーシアムがソハール,バルカやスールの大型発電所計画を落札し,これからの両国の経済関係の幸先のよさを暗示しています。わずか120名あまりの日本人社会も今後は拡大が予想されます。  

 今年に入って吹き荒れた「アラブの春」の嵐はオマーンをも例外とはしませんでしたが,国民の声に耳を傾けた国王の迅速な対応は印象深く,オマーンの明るい将来の道のりを示しているように思われました。  

 その様なさなか,日本は3.11東日本大震災に見舞われました。日本が第二次世界大戦以降受けた最大規模の破壊と苦境は我が国に大きな試練をもたらしています。しかしながら,オマーン政府および国民が日本に示してくれた真の友情と温かい支援は,日本国民に大きな勇気と希望を与えてくれました。当館が設置した義援金口座「フレンズ・オブ・ジャパン」には多額の善意の寄附が寄せられています。このホームページのトップにも記載していますが,オマーンの人々の善意を巡るエピソードは枚挙にいとまがありません。私は,この様なオマーンの人々の連帯と支援を糧に我が国は立派に再興するものと確信しています。

 来年2012年は,日本とオマーンが外交関係を樹立して40周年に当たります。私は既に幾つかの記念行事の準備に取りかかりましたが,私の後任がこの記念すべき年を意義あるものにするよう,10月の着任早々から本格的な準備に当たるものと思います。私も来年が両国関係において意義ある年になることを祈念しています。

 3年余の長きにわたる任期を私が無事に果たし終えることができたのは,カブース国王を始めとするオマーン各界の人々,そしてこのホームページを支えてくださった皆様の庇護と支援があったからに他なりません。この場を借りて,改めて,これまでのご厚誼に深く感謝申しあげます。

 終わりに,我が国とオマーンの関係が一層発展することを祈念して,私が当地で任務を終えるに当たってのご挨拶に代えさせていただきます。それでは皆様,アッサラームアライクム。